相続税はどんな役割を持っているのか
導入
相続税という言葉は、ニュースで聞いても、どこか「一部の大きな資産の話」という印象がありました。
一方で、税収の記事を読んでいくと、所得税、法人税、消費税のような大きな税目だけでなく、相続税も国の税収に含まれています。
では、相続税は税収全体の中でどのくらいの存在なのか。今回は、相続税を「資産の移転にかかる税」として見てみます。
最初に気になったこと
最初に気になったのは、相続税が「どれくらいの人に関係する税なのか」と、「税収としてはどのくらいの大きさなのか」が別の話だという点です。
相続税は、亡くなった人すべてに必ずかかるわけではありません。一定の基礎控除を超える財産がある場合に、申告や納税が関係してきます。
そのため、見るべき数字も二つに分かれます。
一つは、相続税の申告や課税の件数です。もう一つは、国に入る税収としての金額です。
まず確認する資料
今回まず確認したのは、国税庁の「令和6年分 相続税の申告事績の概要」です。
これは、令和6年中に相続が開始したものについて、相続税の申告状況をまとめた資料です。死亡者数、相続税の申告書の提出に係る被相続人数、課税割合、課税価格、申告税額などを確認できます。
あわせて、国税庁の「令和6年度 統計年報」の「租税及び印紙収入決算額調べ」も確認しました。こちらは、国の税収として相続税がどのくらい入っているかを見るための資料です。
ここで注意したいのは、申告事績の「申告税額」と、決算額としての「相続税収」は、集計の目的や範囲が同じではないことです。特に国税庁統計年報の相続税には、注記として贈与税が含まれるとされています。
数字で見るポイント
国税庁「令和6年分 相続税の申告事績の概要」によると、令和6年分の被相続人数、つまり死亡者数は1,605,378人でした。
そのうち、相続税の申告書の提出に係る被相続人数は166,730人です。課税割合は10.4%でした。
ざっくり見ると、亡くなった人のうち、相続税の申告が関係したのは約1割という見え方になります。
同じ資料では、令和6年分の課税価格の総額は23兆3,846億円、申告税額の総額は3兆2,446億円とされています。これは、相続税額のある申告書に係る数字です。
次に、税収として見ます。
国税庁「令和6年度 統計年報」の「租税及び印紙収入決算額調べ」では、令和6年度決算の一般会計分の相続税は3,552,318百万円、つまり約3.55兆円です。この表では相続税に贈与税が含まれます。
同じ表の一般会計分計は75,232,068百万円、つまり約75.2兆円です。構成比では、相続税は4.7%と示されています。
所得税や法人税、消費税と比べると中心的な税目ではありません。ただ、税収全体の中で無視できるほど小さい項目でもありませんでした。
仕組みを整理する
相続税は、働いて得た所得にかかる税ではなく、亡くなった人から財産を受け取るときに関係する税です。
贈与税も、財産を受け取るという点では近い位置にあります。相続税が死亡をきっかけにした財産移転を見るのに対し、贈与税は生前の財産移転を見ます。
この二つを分けて考えないと、相続税の役割が少し見えにくくなります。
相続税は、毎年広く全員にかかる税というより、資産の移転が起きたときに一定の条件でかかる税です。税収としては国の一般会計に入り、税目別の収入として集計されます。
その一方で、課税割合を見ると、対象になる人は限られています。ここが、消費税や所得税とはかなり違うところです。
比較
税収全体の記事では、所得税、法人税、消費税のような大きな税目に目が行きました。
相続税は、それらと比べると税収の柱というより、資産移転の場面に置かれた税と見る方が自然そうです。
令和6年度決算の一般会計分で見ると、相続税の構成比は4.7%です。消費税や所得税のように、日々の買い物や毎年の所得と広く結びつく税とは違い、発生する場面が限られています。
ただし、令和6年分の課税割合が10.4%だったことを考えると、「ごく一部だけの話」と言い切るのも少し単純でした。
他の記事とのつながり
税収全体を見たJM-004では、税金を合計額だけでなく税目ごとに分けて見る必要がありました。
相続税を見ると、その分け方がさらに細かくなります。所得にかかる税、消費にかかる税、企業所得にかかる税、資産移転にかかる税では、同じ国税でも性格が違います。
所得税やその他の税を見ていくと、税収の中身はさらに立体的に見えそうです。
調べて分かったこと
調べる前は、相続税を「資産のある人にだけ関係する税」という印象で見ていました。
資料を確認すると、たしかに課税対象になる人は全体の一部です。令和6年分の課税割合は10.4%でした。
一方で、令和6年度決算の一般会計分では、相続税は約3.55兆円、税収全体の4.7%を占めています。税収全体の中心ではないけれど、税の種類の中では一定の存在感があります。
ここで見え方が少し変わりました。
相続税は、単に「多く集めるための税」というより、資産が次の世代へ移る場面を税制の中でどう扱うかという位置づけを持っているように見えます。
筆者の感想
相続税は、身近なようで、普段の家計からは距離がある税だと思っていました。
でも数字を見ると、税収全体の中に確かに場所があります。しかも、申告の対象になる人の割合と、税収としての大きさを分けて見ないと、印象だけで判断しやすい税だと感じました。
税収を見るときは、合計額だけでは足りません。どの場面で、誰に、どんな形で関係する税なのかを分けて見た方が、国のお金の入口が少し読みやすくなります。
次に読む記事
税収全体をもう一度整理するなら、JM-004「日本の税収はどこから来るのか」に戻るとつながりが見えやすくなります。
このあと、所得にかかる税や、主要税目以外の税を見ていくと、税収の地図がもう少し細かくなりそうです。


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