年金のお金はどこから来るのか
導入
年金という言葉を聞くと、まず思い浮かぶのは毎月払う保険料です。
会社員なら給与明細に厚生年金保険料が出てきます。自営業や学生などの場合は、国民年金保険料を自分で払う場面があります。
そのため、年金は保険料だけで支えられているように見えます。けれど、資料を見ていくと、保険料だけではなく、国庫負担や積立金も関係していました。
最初に気になったこと
このシリーズの最初の疑問は、「年金保険料は別の財源で補えないのだろうか」でした。
ただ、その問いを考える前に、まず確認しないといけないことがあります。
そもそも年金のお金は、いま何から来ているのか。
保険料だけなのか。税金も入っているのか。積立金はどこで関係しているのか。
ここを見ないまま別の財源を考えると、話がかなり大きくずれてしまいそうです。
まず確認する資料
今回確認したのは、厚生労働省の「公的年金の単年度収支状況(令和5年度)」です。
この資料では、厚生年金、国民年金、基礎年金をまたいで、公的年金制度全体の収入と支出を制度横断的に整理しています。
あわせて、厚生労働省の「令和8年度厚生労働省予算案の概要」も見ました。こちらは予算として、一般会計の社会保障関係費や年金特別会計の規模を確認するためです。
年金は、家計のような単純な一つの財布ではありません。年金特別会計や基礎年金勘定など、複数の勘定が関係します。
そのため、この記事ではまず大きな財源の種類をつかむことを優先します。
数字で見るポイント
厚生労働省「公的年金の単年度収支状況(令和5年度)」によると、令和5年度の公的年金制度全体の単年度収入総額は54兆3,904億円でした。
このうち、保険料収入は41兆7,509億円です。金額にすると約41.8兆円です。
国庫・公経済負担は12兆1,034億円、約12.1兆円です。
同じ資料では、公的年金制度全体の支出総額は54兆4,703億円、給付費は54兆991億円とされています。
この数字を並べると、年金の中心財源が保険料であることは確かです。ただし、保険料だけでなく、国庫・公経済負担もかなり大きな金額で入っています。
もう一つ、予算の側からも見ます。
厚生労働省「令和8年度厚生労働省予算案の概要」では、令和8年度予算案の年金特別会計が74兆4,280億円と示されています。元資料では単位は億円で、特別会計の歳出額の純計です。
同じ資料では、一般会計の社会保障関係費の内訳として、年金は13兆8,231億円とされています。
ここで見えるのは、年金は保険料で閉じた仕組みではなく、国の一般会計や特別会計ともつながっているということです。
仕組みを整理する
年金のお金は、大きく分けると三つの要素で見た方がよさそうです。
一つ目は、保険料です。
現役世代や事業主が負担する保険料が、年金財政の中心にあります。厚生年金では、会社員本人と事業主が保険料を負担します。
二つ目は、国庫負担です。
基礎年金には国庫負担が入ります。これは、年金が単なる個人の積立ではなく、社会保障制度として運営されていることを示しているように見えます。
三つ目は、積立金です。
厚生労働省の令和5年度資料では、公的年金制度全体の年度末積立金は時価ベースで304兆119億円とされています。約304兆円です。
積立金は、毎年の給付をそのまま全部払うためだけの財布というより、長期の年金財政をならすための役割を持っていると考えた方がよさそうです。
比較
消費税の記事では、消費税が社会保障と結びつけて語られる理由を見ました。
年金を見てみると、社会保障の中でも、年金は特に保険料との結びつきが強い制度です。
ただし、保険料だけで完結しているわけではありません。国庫負担もあります。一般会計の年金関係費もあります。
この点で、年金は「税金か保険料か」の二択では見にくい制度です。
医療や介護も同じように、保険料と公費が混ざっています。年金を先に見ると、社会保障のお金を読むときの基本形が少し見えてきます。
他の記事とのつながり
年金は、税収の記事とも、消費税の記事ともつながっています。
税収を見たときは、国の収入の入口を確認しました。消費税を見たときは、社会保障と税の関係を見ました。
年金では、そこに社会保険料が加わります。
つまり、国のお金を考えるときは、税だけでなく、社会保険料も一緒に見ないと足りません。
調べて分かったこと
調べる前は、年金はほとんど保険料で動いている制度のように見えていました。
資料を確認すると、保険料が中心であることは変わりません。令和5年度の公的年金制度全体では、保険料収入が約41.8兆円でした。
でも、同じ年度に国庫・公経済負担も約12.1兆円あります。
さらに、積立金もあります。年度末積立金は約304兆円という大きな数字です。
年金は、保険料、国庫負担、積立金が組み合わさっている制度でした。
筆者の感想
年金を「保険料の話」とだけ見ていると、税金や国の予算とのつながりが見えにくくなります。
一方で、「税金で全部支えればよい」という話にしてしまうと、今度は保険料を中心にしている制度の形が見えなくなります。
今回数字を見て感じたのは、年金は一つの財源だけで説明しにくいということです。
最初の疑問である「年金保険料は別の財源で補えるのか」に戻るには、まず保険料、国庫負担、積立金を分けて考える必要がありそうです。
次に読む記事
次に医療のお金を見ると、社会保障の中で、保険料と公費がどう組み合わさっているかを別の角度から確認できます。
消費税の記事に戻ると、社会保障と税の関係も読み直しやすくなります。


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