国の借金はどう見ればいいのか
導入
「国の借金」という言葉は、ニュースや解説でよく出てきます。
金額が大きいので、不安な言葉として受け止めやすいです。
でも調べてみると、「国の借金」と言われる数字には、いくつかの範囲があります。
普通国債残高、国債及び借入金現在高、政府保証債務、国と地方を合わせた長期債務残高など、資料によって見ているものが違います。
この記事では、言葉の印象だけで判断せず、どの数字を見ているのかを整理します。
最初に気になったこと
最初に気になったのは、同じ「借金」という言葉でも、残高と毎年度の支出が混ざりやすいことです。
国債残高は、過去に発行されて残っている国債の額です。
国債費は、毎年度の一般会計歳出に出てくる元利払いの支出です。
財政赤字は、その年度の歳入と歳出の差を考えるときの言葉です。
この3つは関係していますが、同じ数字ではありません。
まずは、国の債務を見る資料ごとの範囲を確認します。
まず確認する資料
今回確認したのは、財務省の「令和8年度予算フレーム」と「国債及び借入金並びに政府保証債務現在高(令和8年3月末現在)」です。
令和8年度予算フレームでは、令和8年度末見込みの普通国債残高と、普通国債残高のGDP比を確認できます。
国債及び借入金並びに政府保証債務現在高は、四半期ごとに公表される統計で、内国債、借入金、政府短期証券、政府保証債務などを確認できます。
長期債務残高や国と地方を合わせた債務を見る場合は、財政関係資料や内閣府の国民経済計算なども手がかりになります。
この記事では、普通国債残高と、国債及び借入金現在高の違いを中心に見ます。
数字で見るポイント
財務省「令和8年度予算フレーム」では、普通国債残高は令和8年度末見込みで1,145.4兆円です。
同じ資料では、令和8年度末見込みの普通国債残高のGDP比は165.5%とされています。
これは、令和8年度予算ベースの見込みで、普通国債残高を名目GDPと比べた数字です。
一方、財務省「国債及び借入金並びに政府保証債務現在高(令和8年3月末現在)」は、統計資料です。
この資料では、令和8年3月末現在の国債及び借入金現在高の合計は1,343兆8,426億円です。兆円で見ると、約1,343.8兆円です。
内訳を見ると、内国債は1,207兆2,188億円、普通国債は1,104兆2,984億円、借入金は44兆3,243億円、政府短期証券は92兆2,995億円です。
また、政府保証債務現在高は27兆2,275億円です。
ここで注意したいのは、普通国債残高1,145.4兆円と、国債及び借入金現在高約1,343.8兆円は同じ範囲ではないことです。
前者は令和8年度末見込みの普通国債残高です。
後者は令和8年3月末現在の統計で、国債だけでなく借入金や政府短期証券も含みます。
仕組みを整理する
「国の借金」を見るときは、少なくとも3つを分けておきたいです。
一つ目は、普通国債残高です。
これは、建設国債や特例公債など、普通国債として発行されて残っている額を見ます。
二つ目は、国債及び借入金現在高です。
こちらは、内国債だけでなく、借入金や政府短期証券も含む統計です。
三つ目は、国と地方を合わせた長期債務残高のような、より広い範囲の指標です。
これは国だけでなく地方も含むため、普通国債残高とは別の数字になります。
さらに、政府保証債務もあります。
政府保証債務は、国が直接借りているお金そのものではなく、政府が保証している債務です。
このように、借金という言葉の中に、国債、借入金、政府短期証券、政府保証債務、国と地方を含む指標が入ってきます。
どの資料のどの範囲かを確認しないまま金額だけを見ると、かなり混乱します。
比較
JM-027で見た国債は、国が資金を調達するために発行するものです。
JM-028で見た国債費は、その国債に関わる毎年度の元利払いです。
この記事で見る国の借金は、発行された国債や借入金が積み上がった残高です。
つまり、国債は「発行」、国債費は「毎年度の支払い」、国の借金は「残高」と分けると少し見やすくなります。
財政赤字は、単年度の歳入と歳出の差を考える言葉です。
財政赤字が続くと国債残高に影響しますが、単年度の赤字と国債残高は同じ数字ではありません。
他の記事とのつながり
国の借金を見るときは、国債の種類、国債費、財政赤字を順番に分ける必要があります。
将来世代への負担を考えるときにも、残高だけでなく、金利、成長率、税収、歳出構造などを見る必要が出てきます。
ただし、この記事では不安をあおるより、まず数字の範囲を分けることを優先します。
調べて分かったこと
「国の借金」という言葉には、複数の数字が含まれます。
令和8年度予算フレームでは、普通国債残高は令和8年度末見込みで1,145.4兆円、普通国債残高のGDP比は165.5%です。
一方、令和8年3月末現在の統計では、国債及び借入金現在高の合計は1,343兆8,426億円、約1,343.8兆円です。
普通国債残高と、国債及び借入金現在高は、範囲も時点も違います。
また、国債残高、国債費、財政赤字はそれぞれ別の数字です。
国の借金を見るときは、金額の大きさだけでなく、どの資料の、どの範囲の、どの時点の数字かを確認する必要があると分かりました。
筆者の感想
国の借金という言葉は、かなり強い印象があります。
でも資料を見ていくと、その言葉の中身は一つではありません。
普通国債残高を見るのか、国債及び借入金現在高を見るのか、国と地方の長期債務残高を見るのかで、数字は変わります。
不安になる前に、まず範囲を確認する。
この手順を入れるだけで、国の借金という言葉を少し落ち着いて読めるようになると感じました。
次に読む記事
財政赤字の記事では、毎年度の歳入と歳出の差が、国債発行や残高とどうつながるのかを見ます。
将来世代への負担を考えるときは、残高だけでなく、利払いや経済規模との関係もあわせて見る必要があります。


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