雇用保険のお金はどう動くのか
導入
雇用保険という言葉を聞くと、仕事を失ったときの失業給付を思い浮かべます。
給与明細を見ると雇用保険料が引かれているので、「失業したときのための保険料」という受け止め方もしやすいです。
でも厚生労働省の資料を見ると、雇用保険は失業等給付だけではありません。
教育訓練、就職促進、雇用保険二事業、育児休業等給付など、働くことを支える複数の仕組みとつながっています。
今回は、雇用保険料、国庫負担、労働保険特別会計の関係を中心に、雇用保険のお金の流れを整理します。
最初に気になったこと
最初に気になったのは、雇用保険が「税金」ではなく「保険」だという点です。
雇用保険料は、労働者と事業主が負担します。
一方で、制度によっては国庫負担も入ります。つまり、保険料だけで全部が完結するわけでもありません。
さらに、雇用保険は労働保険特別会計という特別会計の中で扱われます。
税収を見る記事とは違い、ここでは保険料、事業主負担、国の負担、特別会計を分けて見る必要があります。
まず確認する資料
今回確認したのは、厚生労働省の「雇用保険制度」ページと「令和8年度の雇用保険料率のご案内」です。
制度ページでは、雇用保険が失業等給付を支給するだけでなく、失業の予防、雇用状態の是正、雇用機会の増大、能力開発などの二事業も行っていることを確認できます。
あわせて、厚生労働省の「令和8年度厚生労働省予算案の概要」と、令和8年度の特別会計各目明細書も、確認する資料として扱いました。
この記事の数字は、主に令和8年度予算案と令和8年度雇用保険料率を使います。
数字で見るポイント
厚生労働省「令和8年度厚生労働省予算案の概要」によると、令和8年度予算案で、労働保険特別会計は3兆4,292億円です。
この数字は、各勘定の歳出額の合計額から他会計・他勘定への繰入分を除いた純計額として示されています。元資料では単位は億円です。
同じ資料では、厚生労働省一般会計の社会保障関係費の内訳として、雇用は1,565億円と示されています。
この二つは見ている範囲が違います。労働保険特別会計は雇用保険などの特別会計側の数字で、一般会計の雇用は厚生労働省一般会計の社会保障関係費の内訳です。
次に保険料率です。
厚生労働省「令和8年度の雇用保険料率のご案内」によると、令和8年度の一般の事業の雇用保険料率は13.5/1,000です。
内訳は、労働者負担が5/1,000、事業主負担が8.5/1,000です。事業主負担の中には、雇用保険二事業の保険料率3.5/1,000が含まれます。
雇用保険は、労働者だけでなく事業主も負担する制度だと分かります。
仕組みを整理する
雇用保険のお金は、まず保険料から見ます。
労働者は給与から雇用保険料を負担します。事業主も雇用保険料を負担します。
この保険料は、失業等給付や育児休業給付など、働く人の生活や就職を支える給付につながります。
ただし、雇用保険には二事業もあります。これは、雇用安定事業と能力開発事業のことです。失業した後の給付だけでなく、失業の予防や雇用機会の増大、能力開発にも関係します。
また、育児休業等給付は子ども・子育て支援ともつながります。こども家庭庁の令和8年度予算資料では、子ども・子育て支援特別会計の育児休業等給付勘定も示されています。
雇用保険を失業給付だけで見ると、こうした広がりが見えにくくなります。
比較
JM-003の特別会計では、国のお金は一般会計だけでは完結しないことを見ました。
雇用保険は、その具体例の一つです。労働保険特別会計の中で、保険料や給付の流れが管理されます。
JM-008の年金やJM-009の医療でも、保険料と公費が組み合わさる仕組みを見ました。
雇用保険も、税収とは別の負担である保険料が中心です。ただし、制度によって国庫負担も関係するため、保険料だけの世界として見るのも単純すぎます。
社会保障のお金を見るときは、税金、保険料、国庫負担、特別会計の切り分けが何度も出てきます。
他の記事とのつながり
雇用保険は、子ども・子育てのお金ともつながります。
育児休業等給付は、働きながら子育てする人を支える仕組みであり、子ども・子育て支援特別会計の資料にも出てきます。
また、税と社会保険料の違いを考える記事へ進むと、給与から引かれるお金でも、所得税と雇用保険料では性格が違うことを整理しやすくなります。
調べて分かったこと
雇用保険は、失業したときだけの制度ではありません。
厚生労働省の制度説明では、失業等給付のほか、失業の予防、雇用状態の是正、雇用機会の増大、能力開発なども扱われています。
令和8年度予算案では、労働保険特別会計の純計額は3兆4,292億円です。
令和8年度の一般の事業の雇用保険料率は13.5/1,000で、労働者負担5/1,000、事業主負担8.5/1,000に分かれています。
雇用保険を見ると、社会保障のお金は税収だけではなく、働く人と事業主が負担する保険料にも支えられていることが分かります。
筆者の感想
雇用保険は、給与明細に小さく出てくる項目なので、最初は失業したときの備えくらいに見えていました。
でも資料を追うと、失業後の給付だけでなく、育児休業、教育訓練、雇用安定など、働くこと全体を支える仕組みに広がっています。
保険料を払っているから自分だけの将来のため、というより、働く場を支える共同の仕組みとして見た方が近そうです。
税金とは違うけれど、国のお金の流れと無関係でもない。この中間にある感じが、雇用保険の見えにくさなのだと思いました。
次に読む記事
特別会計の見方を確認するなら、JM-003に戻ると雇用保険の位置が整理しやすくなります。
税と社会保険料の違いを考える記事へ進むと、給与から引かれるお金の性格をさらに分けて見られます。


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